子宮頸部(主に膣内に露出している部位)に発生する腫瘍で、特殊なタイプを除外すると、ほぼ100%ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関連していると考えられています。
年間1万人以上の方が子宮頸がんと診断され、3000人ほどが死亡しています。特に若年や子育て世代で罹患率が高く、20-39歳の女性では乳がんを抜いて1位となっています。
定期的ながん検診により癌の前の段階(異形成)で発見が可能です。
異形成の場合、段階に応じて経過観察、レーザー治療(切らない治療)、子宮頚部円錐切除術など、今後の妊娠する能力(妊孕能:にんようのう)を低下させないように対応が可能です。
感染したHPVに対する治療薬は現在のところ未開発ですが、予防ワクチンは若年者、特に未性交のうちに接種するのが望ましいとされています。
※パピローマのタイピングで判断します。
子宮頚部異形成(CIN)は前癌病変ですが、子宮頸がん検診で異常があった場合に、精密検査(コルポスコープによる狙い撃ち生検)により、3つのレベルに分類されます。
●軽度異形成 :CIN1
●中等度異形成 :CIN2
●高度異形成・上皮内がん:CIN3
CIN1の段階では自然消失もあるため、次の段階に進まないか、経過観察となります。治療はしません。
CIN3では円錐切除術という子宮頸部を一部切除する手術が選択されます。子宮は温存となりますので、以後の妊娠は可能です。
CIN2の扱いですが、施設によって対応が異なっており、意見が分かれるのですが、以前は経過観察が主体でした。CIN3まで進んだら手術と考えらていました。
近年、円錐切除を行った方の妊娠において早産がやや高率になるとの報告があり、CIN2で食い止める(レーザー蒸散:切らない治療)方法も選択されつつあります。当院ではガイドラインに準じて、CIN2の場合にはパピローマウイルスのタイピングを行い、ハイリスクウイルスが陽性の場合には、治療の選択肢もご説明しております。個々の症例に応じて、以後の妊娠希望やライフステージに応じて望ましい方針を一緒に考えたいと思います。
検診センターなどで婦人科検診を行う方も多いと思いますが、その際の頸がん検診とは細胞診を指します。その結果の表記が複雑でわかりにくいと思いますが、NILM=異常なし(少なくとも異形成や癌を疑う所見なし)と考えてください。
ASC-US, L-SIL, H-SILなどは追加の検査が必要となります。細胞診はブラシや綿棒で子宮頚部全体を擦過して検査しているのに対して、精密検査ではコルポスコープという拡大鏡で子宮頚部を観察し、異常が疑われる部分を数カ所サンプリングします。標的をしぼって検査することから狙い撃ち生検とも呼ばれます。
この検査により異常の有無と、その程度(CIN1,2,3)が確定します。がん検診(細胞診)が異常を検出するためのスクリーニング検査、精密検査が治療の要否を決める確定診断の役割となります。子宮頚部異形成(CIN)を経過観察する場合も細胞診と精密検査を組み合わせてフォローしております。