診療内容

女性機能外来

女性ホルモンは女性の体にとってなくてはならないものですが、日、月単位でリズミカルに変化します。また、年単位でも常に変化していきます。その変化に対応しきれないと、生理前の不調、生理痛、自律神経症状が出て、日常生活に支障をきたしたりします。また、女性ホルモンの分泌が正しく行われないと、生理が安定して来なくなります。女性ホルモンは女性の体にとってなくてはならないホルモンなので、単に生理不調では片づけられない問題となります。

女性ホルモンを起因とする症状、疾患に対して、より専門的に治療する外来です。漢方薬による対症的な治療や、ホルモンコントロールにより積極的な治療を行います。

日本産婦人科学会の定義では「更年期とは生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期をいい、卵巣機能が減退し始め、消失するまでの時期」とされおり、一般的には閉経前後の数年間を指して言います。この定義に表される「卵巣機能の減衰」とは、簡単に言うと女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少することなのですが、女性ホルモンは複雑に調節されているために、明確な閉経時期の予測は困難です。

日本人の平均的な閉経年齢は50.5歳と報告されていますが、早い人は43歳以降で閉経を迎え、遅い人は60歳になっても月経があることもしばしば見受けられます。

日頃から体中の色々な場所で活躍している女性ホルモンの量が少なくなってくると、体の端々で不具合が生じ始めます。新陳代謝の低下、自律神経系の失調、骨密度の低下等の変化が起き始め、それに応じて様々な症状が見られるようになっていき、これを総称して更年期症状と呼びます。

点数の評価

0~25点 異常なし
26~50点 食事、運動に注意を
51~90点 当院の更年期・プレ更年期外来を受診しましょう
91点~ 内科・心療内科など総合的に精密検査を行い、適切な治療を行う必要があります。

更年期症状は、ホットフラッシュ(顔や後頭部の火照り、汗)、冷え症、肩凝り、関節痛、鬱症状、睡眠障害、集中力の低下など多岐に渡ります。症状の感じ方には個人差があり、更年期障害に苦しむ人たち全員が同様の症状を呈するわけではありません。そして、これらの症状があるからといって必ずしも女性ホルモン低下による症状とは限りません。自律神経失調症や甲状腺ホルモン異常があっても同じような症状が見られる場合があり、これらを鑑別する為にはいくつかの検査が必要です。

また、月経がまだあるからといって女性ホルモンが少なくないというわけではなく、平均的な女性ホルモン値は年齢と共に徐々に下がっていくので、月経がまだある人でも更年期症状を呈する可能性はあります。この時期をプレ更年期と呼び、この時期に治療を開始すると、本格的な更年期障害の予防に繋がります。

生理痛・月経痛は”がまん”が必要?

日本では生理痛は『がまん』するもの、薬を飲んではいけない!と考えられ、学校教育でも同じように指導されていました。しかし、現在は小中高の学校でも性教育授業において生理痛は我慢するものではなく、薬をのんでもよいと指導されるようになりました。(一部の性教育の遅れているところでは今も古い教育のままですが)

多くの方に少なからずの生理痛があります。その多くの場合、生理痛自体は異常なことではありませんが、生理痛の原因の中には子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があることもありますので、一度は婦人科の診察を受けられることをお勧めします。

性交経験のある方には

性交のある方の場合、生理痛の有無に関わらず、定期的な婦人科検診をお勧めします。 最も大切なことは子宮の異常(子宮内膜症や子宮筋腫など)、卵巣の異常(卵巣のう腫や卵巣の働きのチェック)、性感染症などの帯下(おりもの)の異常の有無など、将来の妊娠する能力にも大きく関係することもある婦人科分野全体に関わるチェックです。

性交経験のない方には

無理な内診を行っておりません。 内診の代わりの診察として、腹部超音波による子宮、卵巣のチェックまたは肛門、直腸から診察する直腸診によって子宮、卵巣の異常を診断しています。

一般に子宮がん検査というと子宮頸部がん検査を指すことが多く、これは発生の頻度から子宮頸部がんの方が多いためです。 しかし、近年、月経不順が原因と思われる子宮体部がんの発生も多くなり、子宮頸部がんの検査だけでは不十分と思われます。また、この2種類のがんは、原因や発症しやすい年齢・特徴・治療法などがそれぞれ違うため、正しい知識が必要です。

生理痛(月経困難症)の原因は?病気のサインかも!?

病気の場合と病気ではない場合症状だけではわかりません

生理痛は自然なことも

『生理痛=病気』ではありません。

生理(月経)とは?・・・子宮内膜の入れ替わりの現象です。

月経の量は通常、子宮の大きさと子宮内膜の厚みによって決まります。出産適齢年齢になれば子宮の内膜は厚くなり、月経量もピークになります。今までに出産経験がある場合は、子宮頸管(図参照)の部分が出産時に開いた経験があるため、多くなった月経量でも問題なく排泄されます。しかし、出産経験がない方や、子宮筋腫や子宮内膜症などで月経量が非常に多くなった場合は月経血が排泄されるためには子宮が異常に収縮する必要がでてきます。これが月経痛の原因になります。

強くなってくる生理痛は婦人科のチェックをお勧めします

年齢とともに生理痛が強くなってくることがあります。その原因として月経量の増加が考えられます。

出産適齢期になると子宮内膜(受精卵が着床する場所:いわゆるベッド)が着床に適した状態、つまり厚みを持ちます。しかし、毎月受精卵が着床する訳ではありませんので、そのベッドである子宮内膜は新しい内膜へと入れ替わります。これが月経です。妊娠に非常に適した子宮内膜は厚みを持つため、月経量が増します。これが生理痛を重くさせる原因です。

これに子宮内膜症がプラスすることで耐え難い生理痛へと変化してきます。

当院では問診と診察(内診、超音波検査)などにより正確な診断と、最新の治療方法を提供しております。

生理の1週間から数日前になると「イライラする」「気分が沈んでしまう」という気分障害や「体の具合が悪くなる」という身体症状が見られて、いざ生理が始まると一気に改善するといった経験は、ほとんどの女性がしているといわれています。

このような排卵から月経開始までの時期に見られる精神症状や身体症状を総称して月経前症候群(PMS)と呼びます。PMSの程度には個人差があり、特に気にならないといった軽いケースもあれば、朝ベッドから立ち上がることも儘ならないといった重いケースもあります。また、「怒りっぽくなる」や「不安で仕方が無い」といった精神症状が強く出た際に、職場や家族などの周りの人に対して強く当たってしまったという後悔の声を聞くことも多い疾患です。

PMSの原因は完全には明確になっていませんが、排卵期から月経開始までの期間では女性ホルモンの値が特に大きく変化する時期であることから、ホルモンの急激な変化が原因と考えられています。また、排卵後に分泌量の増加する黄体ホルモンというホルモンもPMSとの関係が疑われています。女性ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンの分泌量をコントロールすることで多くのPMS症状が改善することからも、この二つがPMSの原因と考えられる根拠となります。

PMSの根治的な治療というものは、その性質上存在しませんが、症状を改善することは可能です。その方法は前述したとおり、体内のホルモン量を一定にコントロールする方法で、主に低容量ピルと呼ばれる経口避妊薬が用いられています。低容量ピルを内服することで体内の女性ホルモンのバランスが一定に保たれ、排卵を阻害することで黄体ホルモンの上昇も抑えることが出来ます。結果としてPMSに効果的な治療となります。しかし、理屈はわかってもホルモン剤を使うことに抵抗のある場合も多く見受けられます。そのような場合は漢方薬が助けになります。漢方薬は血、気、水のバランスの崩れを改善することによって心体の不調を改善する治療で、PMS治療にも活用されます。最近では漢方薬の効果をデータとして示すことが積極的になされており、有効に活用されています。ピルや漢方薬といった治療のほかには、プラセンタを活用することもあります。ベースにピルや漢方薬を使いつつ、プラセンタを補足的に使用することで、より効果的な場合もあります。

当院ではなるべく希望に沿うような方法で、かつ効果的なPMSの改善を図っています。

卵巣の機能とは、主なものとして「排卵」と「性ホルモンの分泌」が挙げられます。初経を迎える時期から本格的に始動するこの二つの機能は20代後半でピークを迎えて、その後は緩やかに機能を落としていきます。機能が低下するとは言っても、排卵という現象は閉経する直前まで見られますが、女性ホルモンの平均的な数値は年齢とともに徐々に下がっていき、個人差はあるものの、全ての女性に見られる自然な変化です。

年齢不相応に卵巣機能が低下している状態を卵巣機能障害と呼び、主な弊害として排卵障害と性ホルモン調節障害が挙げられます。

女性ホルモンの調節異常に関しては卵巣だけでなく、卵巣でのホルモン分泌をコントロールしている脳の部位(下垂体、視床下部)の異常も原因となります。どの部位が原因でコントロールが乱れているのかは数種類の検査によって調べる事ができ、異常に合わせて治療が決まります。

例えば、急激な体重減少によって生理が来なくなるなどの異常が出る場合があり、体重減少性無月経と呼ばれます。また、多嚢胞性卵胞症候群と呼ばれる疾患でも排卵障害があり、生理不順や不妊症の原因になります。

原因によっては一時的なものもありますが、一生付き合って行く必要のある疾患もあり、正確に診断し治療する必要があります。

子宮内膜症とは、通常は子宮の中だけに存在するはずの子宮内膜が、卵巣や子宮の表面、臓器を包んでいる腹膜に出来てしまう病気です。10代から40代の女性の約10%に見られ、生理痛や下腹部痛の原因となります。

卵巣に内膜症が出来た場合は、チョコレート嚢胞という名称で呼ばれる腫瘍となります。この腫瘍は超音波検査やMRIで大きさを評価する事が出来るので、病気の進行度合いを観察する事が可能です。

子宮内膜症は女性ホルモンであるエストロゲンが、病気の進行に大きく影響する疾患で、エストロゲンの値が上がったり下がったりを繰り返す事で、内膜症は進行して、その影響範囲を広げていきます。

子宮内膜症の症状

月経困難症
月経とは子宮内膜が崩壊して子宮から膣へ流れ出す現象ですが、この時に、子宮の中では炎症が起きています。子宮の筋肉の収縮とこの炎症が合わさることで、生理痛の程度が変わります。子宮内膜症になっている場所でもこの炎症は起きてしまうので、子宮内膜症が進行していくに連れて、どんどんと生理痛は酷くなっていき、月経困難症に繋がっていきます。
生理以外の下腹部痛、不正出血
子宮内膜症での炎症は痛みの原因になるのはもちろんのこと、子宮や卵巣、腸、膀胱などの周りの臓器との間に癒着を形成してしまいます。この癒着が更なる痛みの原因となり、生理以外の期間でも下腹部痛があったり、性交痛(sex時の下腹部痛)、排便痛が見られる様になります。また、子宮や卵巣周りで炎症や癒着が強くなると、子宮が収縮しづらくなるので、過多月経(生理の量が多い)、過長月経(生理が長い)、不正出血、オリモノ異常の原因になります。
不妊症
子宮内膜症は不妊症の原因にもなりえます。子宮内膜症による癒着で卵管が閉塞している場合はもちろん、チョコレート嚢胞があるだけでも妊娠率に影響があるとされています。卵巣に出来るチョコレート嚢胞の場合は、その大きさと妊娠率に関連があり、特に嚢胞の直径が4cmを越える場合は子宮内膜症性不妊症の確率が高くなります。他の不妊原因が無い時には、内膜症の治療をする事で妊娠しやすくなるケースもあります。
その他

子宮内膜症自体の大きさがあまり大きくない場合でも、膀胱や尿管と癒着をおこして尿閉(尿が出なくなる)や、血尿の原因となる事があります。また、腸管との癒着が強ければ、便秘や腸閉塞の原因となります。

子宮内膜症は子宮や卵巣に見つかる事が多いですが、中には珍しい場所に発症する事もあります。肺の周りや横隔膜に発症すると、生理に合わせて胸が痛くなったり、肺に穴が開いたりしてしまう月経随伴性気胸と呼ばれる症状が見られます。腸管に発症すると血便の原因に、尿管に発症すると血尿の原因になります。

子宮内膜症の治療

手術(嚢腫核出術、付属器摘出術、子宮全摘術)

子宮内膜症性卵巣のう胞(チョコレートのう胞)はサイズが大きい場合や、症状が強い場合、不妊原因となっている場合、癌化が疑われる場合には手術による治療が適応になります。卵巣を温存する場合は内膜症のみを切り取る嚢腫核出術を行い、温存しない場合は片方の卵巣ごと切除する付属器切除術を行います。両側付属器を切除すると根治術となり、再発の可能性は極めて低くなります。その他、子宮に内膜症があり(子宮腺筋症)過多月経や生理痛のひどくなるような場合は、子宮摘出するケースもあります。

将来子供がほしい人や子宮を残す希望の強い人では筋腫だけ取る手術を実施しますが、筋腫を切り出す際に出血が多くなるのが難点です。また、子宮筋腫は複数個できることが多く、手術中に肉眼で見てもわからないような小さな筋腫や、見えにくい位置に出来ている筋腫は術後も残ることになります。そのため、子宮筋腫は手術後の再発率が高い病気であり、せっかく手術したのにすぐに再発して元通りとなる事もしばしばあります。

偽閉経療法

薬を使って一時的に体を閉経している状態にします。子宮内膜症は女性ホルモンであるエストロゲンに反応して大きくなっていくので、閉経後のエストロゲンが低くなった状態では逆に小さくなっていきます。この現象を、GnRHアゴニストと呼ばれるホルモン剤によって人工的に作り出す治療法が偽閉経療法です。

治療薬として使用するのは同じものですが、2種類の投与方法があります。一つは点鼻薬(鼻からのスプレー剤)で、毎日行うもの、もう一つは注射薬で4週間に1回のペースで注射します。

この治療法では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状が見られたり、骨粗しょう症の発症リスクが高まったりするため、半年間しか治療できません。また、治療初期には不規則な出血を認めることもあります。治療中は生理が無くなるので、生理に伴う症状は見られなくなり、子宮内膜症も小さくなりますが、治療を中止するとすぐに元の状態に戻ってしまいます。そのため、手術の成功率を上げるために手術前に一時的に使用するか、閉経に至るまでの一時的な避難として行われています。

ピル
低用量ピルを使用する事で生理の量や痛みを減らす事が出来ます。また、子宮内膜症は女性ホルモンに依存して成長する疾患なので、ピルによって女性ホルモンを一定にコントロールする事で腫瘍の成長を止める事や、場合によっては小さくすることが出来ます。ピルによる治療では、偽閉経療法で見られる様な更年期症状も出ず、骨粗しょう症のリスクも上がりません。
黄体ホルモン製剤

黄体ホルモンの一種であるプロゲステロンは、排卵後に卵巣から分泌されるホルモンなので、薬用に精製された黄体ホルモン製剤を内服すると、体は排卵後の状態だと勘違いします。黄体ホルモン製剤を飲み続けて、この状態をキープする事で体内のホルモン環境は安定した状態で維持されるので、女性ホルモンに依存している子宮内膜症は、その勢力が弱まります。また、プロゲステロンには子宮内膜細胞の成長を止める作用もあるので、子宮内膜細胞から出来ている子宮内膜症も成長し難くなります。

この様なプロゲステロンの作用を利用した黄体ホルモン製剤による治療は子宮内膜症の症状軽減はもちろん、嚢胞の縮小効果や手術後の再発抑制効果などが認められています。

IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)
子宮の中に黄体ホルモンを持続的に放出する器具を装着する治療法です。黄体ホルモンには子宮内膜を薄くする効果があるので、避妊効果の他に生理痛の緩和、生理の量を減少させる効果があります。IUSの装着に適している女性(出産歴がある、長期避妊を希望している等)には画期的な治療となりますが、場合によっては装着出来ない可能性もあります。

チェックポイント

子宮内膜症は月経の度にゆっくり進行していくので、「どんどん酷くなる生理」というのが特徴的な症状です。月経時の腹痛や、性交時痛、排便痛などの骨盤痛と呼ばれる症状は痛み止めの使用によって一時的に和らぐ事があったとしても、その原因となっている内膜症が改善している訳では無いので、生理の度に症状が強くなっていきます。

子宮内膜症は、その大きさに応じて癌化や不妊症等の合併症のリスクが変化する事が知られており、しっかり定期的に経過を観察する事が重要です。